フランスの詩人アルチュールランボー。その詩しを同じく日本の詩人、中原中也が現在の東京外大でフランス語を学んでいたため、1933年に翻訳され上梓されたのが本詩集である。詩集の紹介はこれくらいにしておいて、個人的に中也訳の詩集で、特筆すべきと感じたのは、訳者の中原とランボーの生涯や、感性などの類似性である。それを知るためには、お互いの生い立ちを知る必要がある。二人の生まれだが、ランボーは陸軍大慰の5兄弟姉妹の2子として1854年にフランス北部で、中也は1891年にランボーが47歳で早世したその16年後の、1907年に山口の代々開業医の医者の六人兄弟の長男として生まれた。二人とも時代も境遇もバラバラだが、やはり互いに共通しているのは、文学に早熟で神童と歌われた点である。実際中也は地元でも名家の医者のもとに生まれ彼自信も、それに応えるかの如く小、中そして高校入学後に文学に没頭するまで、大変成績優秀な神童として将来を嘱望された。一方ランボーはフランス北部の陸軍大慰のもとに生まれ、彼自信の母親の勤勉的な性格に影響を受け、中学から一家の転居にともなって、11才で入学した高校でも、ラテン語の詩で幾つもの優等賞を受賞し、同じく神童の名をほしいままにしている。そんなランボー、中也の文学、詩作との出会いは、まずランボーが15才の頃、同高校に修辞学の教師として赴任した、これまた22歳の若きジョルジュ·イザンバールという教師の存在が決定的となる。そこでランボーはイザンバールの持つ教養、思想に多大な影響を受け、彼自信も読書に文字通り沈溺し、以前にも増して精力的に詩作を行ったのが始まりである。一方で中也はもっと早く、彼が幼少期、6人兄弟の内の弟、中原亜郎が脳膜炎を発症し、惜しくも亜郎はそれにより日の目を見ることもなく、若くして死去する。中也は亜郎の死に強いショックを受け、中也は、弟との死に悲哀するのみならず、弟の人生の軌跡を残すべく、弟の死を詩として結実させたのが詩との出会いである。そこから中也は優秀な成績を維持し、現在の山口県立山口高校に12番の成績で入学する。だが高校で突如文学、読書に目覚め、成績はみるみるうちに下降していったのが始まりである。
このように互いの人生と、文学までの出会いを軽く見渡したが、やはり数々の共通点が見受けられる。第一に、先ほども述べた神童と歌われた点も、第二に、二人とも早くから詩と文学に出会い、それというのもお互いとても利発的で自我の目覚めが早かったことである。そして二人のどこか恍惚とした雰囲気や、また二人の若さゆえの華奢な雰囲気や、天才故の不安定な性、儚げな雰囲気も驚くほど酷似している。後者の点は中原中也が30歳で夭折し、またランボーは37歳と、十分に夭折かもしれないが、詩人としての実質的な人生は、僅か4年を以てして、筆を折っていることを見ても明らかである。
何れにせよ中也訳のランボー詩集を語る上では、中也自身の人生や感性を排して語ることは不可能だと思うし、そういったお互いの類似した人生や、天才特有の共通した感覚が、ランボーが詩を書き、中也が優れた解釈で翻訳させた。それはもはや翻訳者という、ただ無機質的に外国語を母語に変換するという、単なる小用を意味しない。一種の「共同作業」によって詩集に昇華したと言えよう。
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ランボオ詩集 (岩波文庫) 文庫 – 2013/8/21
中原 中也
(翻訳)
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ランボオ(1854―1891)と中原中也(1907―1937)。早熟早世の二人の詩人の個性がぶつかり合って生まれた〈化合物〉とも言うべき訳詩集。中也は自らの詩人としての嗅覚を頼りにランボオの詩を読み解き、いわば無手勝流に見事な〈中也節〉で訳し上げてみせた。本書は小林秀雄訳『地獄の季節』と好一対をなす。(解説=宇佐美斉)
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2013/8/21
- 寸法10.5 x 1.2 x 15 cm
- ISBN-104003109724
- ISBN-13978-4003109724
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2013/8/21)
- 発売日 : 2013/8/21
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 320ページ
- ISBN-10 : 4003109724
- ISBN-13 : 978-4003109724
- 寸法 : 10.5 x 1.2 x 15 cm
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2013年9月29日に日本でレビュー済み
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中原中也が結婚式をした温泉旅館に宿泊してきたばかりで、新訳文庫版に出会えたのも何かの縁のように思っている。
2021年1月30日に日本でレビュー済み
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綺麗に梱包されて即発送されたのでよかった。
商品はとてもきれいでした。
商品はとてもきれいでした。
2022年8月2日に日本でレビュー済み
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中也の詩の哀しげなリズムと鋭い感性で選択された言葉の数々。私は好きです。
おそらく彼はランボオの詩を訳すことで詩人としての技量を磨いたのでしょう。
でも申し訳ないが、私にはランボオを理解する感性が不足しているようです。
ランボオについては小林秀雄が高評価しているので余計に話がややこしくなる。
どこまでがランボオの感性でどこからが中也の感性か、などという読み方自体が
間違っていたのかもしれない。あくまで私の感性に基づく感想ですので念のため
おそらく彼はランボオの詩を訳すことで詩人としての技量を磨いたのでしょう。
でも申し訳ないが、私にはランボオを理解する感性が不足しているようです。
ランボオについては小林秀雄が高評価しているので余計に話がややこしくなる。
どこまでがランボオの感性でどこからが中也の感性か、などという読み方自体が
間違っていたのかもしれない。あくまで私の感性に基づく感想ですので念のため