『大鹽平八郎』は大塩平八郎の乱の顛末記である。天保8年2月19日の暴動当日、その後大塩が逃亡自決して磔柱に懸けられるまで、そして「附錄」の創作ノートの3部から成る。全体として事実を淡々と述べていく印象で、盛り上がるところはなく、大塩への共感が感じられない。余談だが北方謙三の『杖下に死す』は本書の「悉く平八郎が獨裁の杖の下に項を屈してゐる」から着想を得たものであろう。
著者の大塩への評価は宇津木矩之允の「そこで其殘賊だがな。先づ町奉行衆位の所らしい……我々は實に先生を見損つてをつたのだ。先生の眼中には將軍家もなければ、朝廷もない。先生はそこまでは考へてをられぬらしい」に現れている。附錄にも「平八郎は哲学者である。併しその良知の哲學からは、賴もしい社會政策も生れず、恐ろしい社會主義も出なかつた」とあり、事実だろうが辛辣である。
『堺事件』は土佐藩士によるフランス兵に対する攘夷事件の始末記である。こちらは対照的に登場人物が活き活きと描かれており、列強の横暴ぶりと武士の心意気とがよく現れている。理不尽にも死刑にされたのを名誉の切腹に変更させ、「フランス人共聽け……日本男子の切腹を好く見て置け」と切腹する者が11人に及ぶとフランス公使は耐え切れず遂に席を立ってしまう。残酷なようだが日本人なら思わず笑ってしまう一編である。
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大塩平八郎・堺事件 (岩波文庫) 文庫 – 1940/1/10
森 鴎外
(著)
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- 本の長さ120ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1940/1/10
- 寸法10.5 x 0.6 x 14.8 cm
- ISBN-104003100662
- ISBN-13978-4003100660
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1940/1/10)
- 発売日 : 1940/1/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 120ページ
- ISBN-10 : 4003100662
- ISBN-13 : 978-4003100660
- 寸法 : 10.5 x 0.6 x 14.8 cm
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著者について
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1862‐1922。島根県出身。本名は林太郎。幼少期に東京へ移り東大医学部を卒業後、軍医となる。ドイツへ留学帰国後執筆活動をはじめる。自己見解を 曲げないことでも有名で、医学界、文学界の双方において論議を巻き起こす。「高瀬舟」「山椒大夫」などから、堪能な語学を生かしての翻訳作品と著書多数(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『舞姫』(ISBN-10:4903620522)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月29日に日本でレビュー済み
今年(2017年)はロシア革命から100年。ロシアではスターリン再評価の動きもあるそうだが、喉元過ぎたからって熱さ忘れすぎだろ!ところで忘れてはならないのは、大塩平八郎の乱(1837)から180年でもあること。中学の歴史の授業では幕府の元役人でありながら悪政に憤って反乱を起こした男前の陽明学者と習って印象深かった。『大塩平八郎』は役職名と一緒になった長たらしい漢字の人名がやたらと沢山出てきてすこぶる読みにくいが、音読して何とか読み切った。心理描写は少なく、史料から再構成した事実経過を淡々と連ねた中編。「附録」で鴎外は「平八郎の思想は未だ醒覚せざる社会主義である」と書いている。大正二年の作だから、大逆事件の三年後。啄木が「時代閉塞」と呼んだ状況がいっそう深刻化するなかで、鴎外にも思うところがあったのだろうか。
『堺事件』これは慶応4年2月15日(旧暦。太陽暦では1868年3月8日)に和泉国堺町内で起きた、土佐藩士によるフランス帝国水兵殺傷(攘夷)事件、及びその事後処理で藩士らが腹を切らされた事件を描く。いわば生麦事件のフランス版。ハラキリを見るに見かねたフランス人の要望により九人の命は助かる。切腹のリアルな描写が読むだけで痛い。これ、たかだか150年前の日本なのか。『大塩平八郎』と同じく、心理描写はあまりなく事実経過が淡々と叙述される。鴎外はどういう意図でこの短編を書いたのだろうか?(T.F.)
『堺事件』これは慶応4年2月15日(旧暦。太陽暦では1868年3月8日)に和泉国堺町内で起きた、土佐藩士によるフランス帝国水兵殺傷(攘夷)事件、及びその事後処理で藩士らが腹を切らされた事件を描く。いわば生麦事件のフランス版。ハラキリを見るに見かねたフランス人の要望により九人の命は助かる。切腹のリアルな描写が読むだけで痛い。これ、たかだか150年前の日本なのか。『大塩平八郎』と同じく、心理描写はあまりなく事実経過が淡々と叙述される。鴎外はどういう意図でこの短編を書いたのだろうか?(T.F.)
2012年3月11日に日本でレビュー済み
鴎外の大阪を舞台にした歴史小説二編を収録。どちらも淡々とした品格ある筆致で、作者の感想や意見は排されているため、歴史小説のお手本のように取り上げられることもある。ただ、どちらもどこまで史実に忠実かという点は後世の作家や研究者から疑問視されており、客観記述の体裁を装っている分、史実と照らし合わせると却って鴎外の巧妙な情報操作が浮かび上がるという問題も孕んだ作品でもある。
こういった点の批判としては、大岡昇平や大谷晃一(=地の利を生かした豊富な一次資料の貸与により大岡氏の堺事件研究を助けた)両氏等の批判が代表的なほか、個人のブログ等でも沢山取り上げられている。ご興味のある方はそういった情報と合わせて読んで頂けると興も深まるかもしれない。
こういった点の批判としては、大岡昇平や大谷晃一(=地の利を生かした豊富な一次資料の貸与により大岡氏の堺事件研究を助けた)両氏等の批判が代表的なほか、個人のブログ等でも沢山取り上げられている。ご興味のある方はそういった情報と合わせて読んで頂けると興も深まるかもしれない。